梅子のスペイン暇つぶし劇場

毒を吐きますので、ご気分の優れない方はご来場をご遠慮ください。

我が家のおバカで楽しい言葉事情

今週のお題」が“方言”だったので、地方出身の端くれとして、今回も果敢にチャレンジしたいと思う。

 

私は、東北の雪国出身なので、方言や訛りの中で育った。

その後、東京へ上京して、いっちょまえに標準語で学生生活→社会人生活を送ったが、やっぱり生まれ育った田舎の方言と訛りは、私の中でしっかりと根を張っている。

 

東京生活から一変。

今では方言も標準語も何も、まったく異なる言葉の国で生活を送っているわけだが、そういえば昨年の夏、日本に里帰りした際に、実家に帰る前に東京で、元同僚たちと再会した時に1人の元同僚が、何気なく私に聞いた。

 

「梅ちゃん、私たちに会う前に、実家に帰った?」と。

 

久しぶりに思いっきり日本語を話せるから、元同僚たちに負けないぐらい、私もたくさん話したのだが、久々に話す私の日本語は、どうやら最高に訛っていたらしい。

 

「ううん、帰ってないよ。来週帰るつもりだけど、なんで?」と聞くと、私が話す日本語が訛っているので、元同僚は、私が先に実家に帰っていたのかと思ったらしい。

 

この、元同僚との何気ないやりとりは、なぜかわからないけれど、今でも時々思い出す。

 

ここスペインにいると、夫ビクトルと話す時は、ほぼ8割方、英語でやりとりしている。

子供たちと話す時は、頑張ってスペイン語を使う。

でも、飼っている猫、猫の助に話しかける時や、独り言は、100%日本語だ。

しかも、地元の方言と訛り満載だ。

 

「夫とは英語で話し、子供たちとはスペイン語で話しています☆キラーン」

なーんて、あたかもバイリンガルトリリンガル気取りのかっちょいいこと言ってるが、実際、私の英語は、ばりっばりのカタカナ発音だ。

やはり昨年の夏、ビクトルを連れて実家に帰った際に、ビクトルは日本語を話せず、私の家族はスペイン語はもちろん、英語すらも話せないので、当然私が両者の通訳係になるのだが、「ちょっと梅子、アンタの英語すんごい訛ってない?やーだぁ、アンタ、いつも旦那さんにそんな英語で話してんの?」と、ビクトル日本語わかんないんだっつーのに、果敢に日本語でビクトルに話しかけまくる母に「恥ずかしい!」とまで言われたぐらいだ。

 

それだけではない。

普段、私は、英語・スペイン語・日本語を、オリジナルも甚だしいほどミックスしまくった言葉で話している。

「Hoy は good weather だねぇ~。」(訳:今日はいい天気だねぇ~。)

毎日こんな具合だ。

 

子供たちと話すスペイン語にも、当然、

「ちょっとー!espera un momentoだっつーの!」(訳:ちょっとー!ちょっと待ってっつーの!)

とか、

「Esto es うどんです~。No es 素麺です~。」(訳:これはうどんです~。素麺じゃないです~。)

とか、所々に日本語を挟むので、今では、子供たちが「チョットー!」とか、「〇〇デスゥ~。」とか、私の真似をする有様だ。

 

こんな調子のスペイン語なので、私のスペイン語は未だにまったく上達していない。

ビクトルの友人達に会うと、必ずと言っていいほど「スペインに来て何年目?もうだいぶスペイン語も話せるようになったでしょう?」とか聞かれるが、いつも私の答えは「un poco. (少しね)」とか、「poco a poco.(ちょっとずつね)」だ。

 

スペインに来て知ったことなのだが、ここスペインにも方言や訛りはあり、こと方言については、“言語”として、地域によっては方言の地位が確立されている。

私が知っているだけでも、“言語”とみなされている、スペインのいわゆる方言は、バスク語カタルーニャ語ガリシア語、バレンシア語がある。

私たちが俗に言う、“スペイン語”は、スペインでは公用語で、“カステジャーノ”と呼ぶ。

 

バスク語カタルーニャ語ガリシア語、バレンシア語等は、それぞれの、これらの言語を使う地域では、カステジャーノに次ぐ、第二公用語として、例えば、道路の標識や、通りの名前など、公の場でも使用されているし、学校では、一教科として、小学校クラスから授業がある。

一教科として扱われているだけでなく、すべてではないが、いくつかの他の教科の教科書は、カステジャーノではなく、これらの第二言語で書かれていたりする。

DVDの、吹替えや字幕を選択する画面では、「カステジャーノ」の他に、たまに「カタラン(カタルーニャ語)」や「バスコ(バスク語)」の選択肢があったりする。

 

私たちが暮らすこの地域もまた、カステジャーノ以外の第二言語がある地域なので、我が家の子供たちの学校でも、この第二言語の授業があるし、いくつかの他の教科の教科書は、その第二言語で書かれている。

 

スペインでは、小学校1年生クラスからすでに、カステジャーノ(国語)の他に、第二言語、それから英語の授業があるので、例えば我が家の次男、エクトルがまだ1年生だった時、彼はよく第二言語と英語をごっちゃごちゃに覚えたりしていた。

 

たまに、子供たちが私に、宿題や勉強を教えてと言う時がある。

英語なら、問題なく教えられる。

でも、稀に、別の教科の時、教科書がカステジャーノだったら、100歩譲ってまだ読めるが、第二言語だった場合はお手上げだ。

すぐさまビクトルに出動命令を下す。

 

夫ビクトルは、この第二言語が嫌いだ。

「将来に何のためにもならない!」と、よく言う。

彼は一応、この地域の第二言語は話せるが、日常生活ではまったくと言っていいほど使わない。

地域の中でも、カステジャーノよりも第二言語を日常的に使う町や村もあるのだが、私たちが住むこの街では、カステジャーノのみでも何ら問題はない。

 

日本でも、東北地方、関西地方、沖縄…などなど、その地域独特の方言や訛りがあるけれど、もしこれが日本の第二言語として、スペインのように学校で一教科として習ったり、道路の標識や、市役所発行の公的な書類なんかが、方言だったら、おもしろいだろうなぁと思う。

 

あ、でも、もし今自分が現役の小学生や中学生、高校生だったら、「国語と英語だけでもいっぱいいっぱいなのに、何だよ!第二言語って!!」とか言って、第二言語の授業を呪うかな。笑。

我が家の長男、アーロンのように。

(アーロンは昨日、第二言語のテストに落ち、今週末、再テストを控えております…。)

 

 

■本記事のタイトルは、映画「我が家のおバカで愛しいアニキ」(2011年公開、アメリカ)をモジって使わせていただきました。
記事の内容と映画は、一切関係ありません。