読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

梅子のスペイン暇つぶし劇場

毒を吐きますので、ご気分の優れない方はご来場をご遠慮ください。

路肩の中心で、馬鹿とさけぶ

今週見損ねていた「相棒」でも、ネットで見ようかと思っていたのに、どうやら今夜もおあずけだ。

 

つい今しがた、ブログに書かなくてどうする!ってぐらいの、ホットなネタが舞い込んできたので、この時間は急遽、「相棒」ネット観賞を変更して、この記事を書くことにしています。

 

21:50頃、下のエントランスのチャイムが鳴り、子供たちが前妻シュエの家族の元から帰ってきた。

お、今日はやけに早いな…と思いつつ、私は覗き見のために寝室の窓へ、夫ビクトルは、いつものようにポケットにレコーダーを忍ばせて、子供たちを迎えるために階下へ降りて行った。

 

私が窓から外の様子を覗いていると、突然、

・・・◎△$♪×¥○&%#?!!!!」と、意味不明のシュエの甲高い叫び声と共に、エントランスのゲートをバチコーン!!と乱暴に閉める音がしたと思ったら、シュエがぷりぷり怒った様子で現れた。

いつもならば、彼女はその後、夫マックスの待つ車のトランクを開けて、今ビクトルと交換してきた子供たちの私服が入ったバッグをしまうのだが、今回はトランクは開けず、バッグを持ったまま助手席へ直行。

助手席のドアを開けて、バッグを車内に投げ込むと、自身は乗り込まずに再び叫んだ。

 

GILIPOLLAS!! ビクトル 〇〇〇〇(ビクトルのフルネーム)!!」と。

 

Gilipollasとは、スペイン語で「バカ、アホ」という意味だ。

 

運転席で、おそらく夫マックスが「一体どうしたんだ?」とでも聞いたのだろう。

その後、彼女は車に乗り込みながら、「だってさー!◎△$♪×¥○&%#?!…」と、何かまくし立てているような声が聞こえたが、彼女は車のドアを閉め、車は去って行ってしまった。

 

と同時に、玄関のドアが開く音が聞こえたので、私は慌てて玄関へ向かった。

 

「お帰りなさい。どうしたの?彼女が道で叫んでいるの聞こえたけど?」と、私はビクトルと子供たちを迎え入れた。

子供たちは押し黙っていた。

ビクトルは「お前らのママはクレイジーだ!完全に狂ってる!」と、怒りで興奮冷めやらぬといった状態。

次男エクトルは、苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 

「どうしたもこうしたもないよ!エクトルがまた頭痛いんだと!」

ビクトルが、吐き捨てるように教えてくれた。

 

「まったく!これで何回目だよ?エクトルが頭痛いつって日曜日に帰って来るのは!ゆうに4~5回は超えたぞ!」

ビクトルの興奮が収まらない。

 

「ねぇ、彼女、“gilipollas!”つって、あなたの名前フルネームで叫んでたよ?」と、ついついビクトルの興奮に拍車をかけてしまう私。

 

ビクトルは、早速長男アーロンをキッチンに呼んで、エクトルがどんなふうにこの週末を過ごしたのか、事情聴取を始めた。

エクトルは、「あぁ、頭痛いよぅ。」と、フニフニ言いながらもチャッチャとパジャマに着替え、ベッドに潜り込もうとしている。

エクトルの声が鼻声なのに気づいて、私はエクトルの脱ぎ捨てた私服を片付けながら、「風邪引いたでしょう?声が変だぞ。だから頭痛くなったんじゃない?この週末、なんか寒い思いでもした?」と、あまり彼を責めないように気を付けながら、穏やかに話しかけた。

 

エクトルは、「この週末は、なんだかとっても眠くて、毎日早い時間に寝たんだよ。でも、土曜日、中国語のレッスンに行く時がすごく寒くて…。」と、フニフニ答えた。

(子供たちは毎週土日、シュエの夫マックスの実家の近所の、中国語レッスンに通っている。)

 

ビクトルはキッチンでアーロンに事情聴取、私は子供部屋でエクトルの世話をしていると、ビクトルの携帯がメッセージを着信。

一瞬、全員に沈黙が走る。

メッセージは、想像していたとおり、シュエからだった。

 

「けっ!コイツ本当にバカだわ。」

メッセージを読んで、ビクトルが呟く。

「彼女、何て?」

私が、もはや興味津々で聞いてみる。

「エクトルの頭痛は、梅子、お前のせいだってよ。ほら、この前の公園の。梅子を叱らないで、自分ばかり叱られるのはアンフェアだってよ。」

ビクトルが、苦笑しながら教えてくれた。

私たちの会話を聞いていたアーロンは、深い溜め息をついて沈黙していた。

私が、「君のママは、ホントにすごいねぇ~。」と茶々を入れると、「知ってるー。」と一言、呆れた様子で答えた。

 

子供たちが帰って来る前、「今夜は飲まずに早く寝る」と言っていたビクトルだったが、案の定、「俺、やっぱビール買ってくるわ。梅子、一緒に行かない?」と言うので、エクトルに子供用の鎮痛解熱剤アピレタールを飲ませ、子供たちを寝かせた後、私たちは近所にある中国人が営む店に、ビールを買いに行くことにした。

 

エレベーターで階下のエントランスへ行くと、少し冷静を取り戻してきたビクトルが、ついさっき、このエントランスで起こった出来事を教えてくれた。

 

ビクトルが、ポケットにレコーダーを忍ばせ、先週の子供たちの私服の入ったバッグを持って、エントランスへやって来ると、エクトルが地べたに寝そべっていたらしい。

このクソ寒い夜に、冷えっ冷えの大理石の床の上にエクトルが横になっていて、シュエとアーロンはそれを見降ろす格好で佇んでいたそうだ。

ビクトルがやって来たのに気付いて、エクトルはいかにも病人だといわんばかりの体で、やおら起き上がったそうだ。

「エクトル、お前床に寝そべって何してんだ?」と、ビクトルがエクトルに聞くと、間髪入れずにシュエが喋り出した。

「違うのよ。エクトルが、頭がすごく痛いって言うもんだから…。」

 

エクトルがまた頭痛を起こしたことにカチンときたビクトルが、「お前、これで何回目だ?日曜になると毎週頭痛いって帰って来るのは!どうせテレビの見すぎかゲームやりまくって、夜もろくに寝なかったんだろう?」と、エクトルの顔を見て言いつつも、実はシュエに向けて文句を言ったと、ビクトルが説明した。

シュエがすかさず「子供を叱らないでよ!それに私のせいにもしないでくれる?」と、声のボリュームを上げながら、ビクトルに反抗した。

 

「おいおい!俺の家で大声出すのはやめてくれるかなー!」と、ビクトルは今度はシュエを直接怒鳴りつけ、シュエと服の入ったバッグを交換すると、急いで子供たちをエレベーターに促した。

怒りのスイッチが入ったシュエは、「私のせいじゃない!」と叫びながら、ビクトルと子供たちを追って、一時はエレベーターの扉の所まで来たそうだ。

ビクトルがエレベーターの扉を閉めようとした時、シュエは、

バカな男、ビクトル 〇〇〇〇 〇〇〇〇(ビクトルの完璧フルネーム)!呼びたきゃ警察でも何でも呼びなさいよ!

とシャウトして、エントランスのゲートを力ずくでバチコーン!と閉め、出て行ったらしい。

 

私が窓から聞こえていたのは、この部分のお尻の所と、ゲートを乱暴に閉める音、そして、ビクトルと子供たちには聞こえていなかった、路上での再びの、ビクトルに対する罵倒だった。

 

ビールを買って、家に戻ってきた私たちは、キッチンでレコーダーの録音を聞いた。

 

「エクトル、お前床に寝そべって何してんだ?」と問いかける、ビクトルの低い声。

そこから始まるシュエの甲高い声。

2人の言い争いのボルテージが瞬く間に上がっていくのが、生々しく聞き取れる。

最後の、「バカな男、ビクトル!警察でも何でも呼びなさいよ!」と、もはや悲鳴のようなシュエの叫び声と共に、ゲートが乱暴に閉まる音。

直後にエレベーターの中で、「大丈夫か?お前たちのママは狂ってる…。」と子供たちに呟くビクトルの声。

 

「日曜日に、エクトルが頭が痛いって帰って来ても、今まで僕はシュエにクレームしなかった。クレームしても、彼女をいたずらに怒らせて、平和な時間を無駄に破壊されるだけだからね。」

録音を聞き終えて、ビクトルが静かに話し出す。

 

「彼女はまた僕の家の前で、子供たちの前で暴れてくれた。もう沈黙を貫くのは疲れた。今度は僕の番だ。

 

もう何度目?

宣戦布告の旗が、再び上がった。

 

「来週、弁護士にアポを取ったら、弁護士にこの録音も聞かせる。いいお土産になった。」

 

ビクトルは今、買ってきたビールを美味しそうに飲みながら、アポイントを取る弁護士とは別の、これまた弁護士をしている親友に宛てて、今夜の出来事をメールに書いている。

 

 

■本記事のタイトルは、映画「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年公開、日本)をモジって使わせていただきました。
記事の内容と映画は、一切関係ありません。