梅子のスペイン暇つぶし劇場

毒を吐きますので、ご気分の優れない方はご来場をご遠慮ください。

All You Need Is FROM CHINA

新年、明けましておめでとうございます。

昨年は、たくさんの愚痴にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。

今年もどんどん吐き出していく所存です。

何卒よろしくお願いいたします。

 

さて、2017年一発目の愚痴、いってみようと思います。

 

 

昨年の、リオデジャネイロオリンピック閉会式での、東京オリンピックの引継ぎプレゼンテーション、あの、安倍首相がマリオになって現れたヤツを、皆さんもきっとご覧になったと思う。

私はあのプレゼンを、Youtubeで見たのだが、度肝を抜いた。

と、同時に、日本のアニメやゲームのキャラクターが、もはやオリンピックという世界的にも歴史的にも大きなイベントで、いわば国の代表として起用され、そしてまた大きな歓声を以って世界中に受け入れられることに、嬉しいやら誇らしいやら、異国に住む日本人としての立場でも、感慨はひとしおだった。

 

もちろん、我が家でも、日本生まれのアニメやゲームには、子供たちが大変お世話になっている。

ドラえもんポケモンは、ほぼ毎日テレビのアニメチャンネルで見ることができるし、昨年からは、ようやくここスペインでも妖怪ウォッチの放送が始まった。

以前、スペイン国内の地方へ旅行に行った時、宿泊していたホテルで早朝に何気なくテレビをつけたら、こち亀クレヨンしんちゃんが放送されていた。

クレヨンしんちゃんはスペインでも何気に人気があるのは知っていたが、まさかこち亀まで放送されているとは知らず、感激のあまりしばらく見てしまった。

スペイン語を話す両津勘吉が、とても新鮮だった。

 

現代の子供たちだけではない。

例えば、夫ビクトルは、幼少期をマジンガーZアルプスの少女ハイジを見て育ったというし、フランダースの犬もテレビで見ていたそうだ。

 

我が家の子供たち、特に長男のアーロンについて言えば、彼は結構なアニメ&ゲームマニアだ。

ポケモンイナズマイレブンのマンガを愛読し、ニンテンドーDSではポケモンモンスターハンター、プレステではNARUTO -ナルト-のゲームにハマっている。

宿題の英単語は、聞いても答えない(答えられない)くせに、ポケモンの歴代DSゲームのタイトルは、聞いてもないのにじゃんじゃん言ってくる。

スペインではまだ放送されていないドラゴンボールONE PIECEも一応知っているようだ。

(これらのマンガやDVDはすでに売られている。)

テレビもマンガもゲームも、話している言葉は違うけれど、見ている分には、ここは日本か?と見紛うばかりだ。

 

そんなアーロン、最近は、ゲームソフトやマンガだけでなく、キャラ物の洋服やらフィギュア、そしてサントラCDなども興味を持つようになった。

アーロンもエクトルも、彼らが小さい頃から、身の回りの物はほとんどすべてにアニメキャラがプリントされている物ばかりだが、歳を重ねるにつれ、彼らの好みも少々マニアック…というか、こだわるようになってきたので、例えば「イナズマイレブンの〇〇が欲しい!」と思っても、ここスペインでは手に入れるのが難しい。

そんな時に、“アニメ天国”日本からやって来た私は、彼らにとって難関を乗り越えられる救世主が現れた感じなのかもしれない。

 

ところが、彼らにとっての“救世主”は、何も私だけではなかった。

そう、もう1人の“救世主”は、彼らの母親シュエだ。

以前の記事「iLa iLa iLa」でもお伝えしたが、シュエは母国中国へ出張の度に、子供たちにたくさんお土産を買って来る。

その中には、もちろん、日本生まれのキャラクターのはずの物や、挙句の果てには、自国スペインのサッカーチームブランドの物まで、“中国のお土産”として買って来るのだから驚きだ。

 

ところで、私がまだ日本で生活していた頃は、大して気にも留めていなかったのだが、今や大概の物は“Made in China”ではないだろうか。

お手元の物をぜひご覧いただきたい。

目覚まし時計、ハンドタオル、洋服、子供のおもちゃ…等々。

 

昔、ビクトルに会いにスペインへ行くため、ビクトルだけでなく、子供たちや、彼の友達へと、日本からたくさんお土産を買って持って行ったことがあった。

ビクトルもビクトルの友達も、受け取った最初は「日本の物だ!すごいすごい!」と大喜びするのだが、タグを見て「アハハ…、Made in Chinaだ…。」と、苦笑した。

そこで初めて、私は気づいた。

外国人に日本のお土産をあげる時は、“日本で買った物”ではなく、“Made in JAPAN”でないと意味がないのだ、と。

それからは、できるだけ生産国を気にしてお土産を選ぶようになったが、手頃な値段の物は、大抵が“Made in China”。

“Made in JAPAN”は、意外にも探すのが難しいことを知った。

 

話が逸れたが、そんなわけで、子供たちにとっては、私とシュエ、この2大救世主の恩恵を受けられるわけだが、日本が誇れるアニメやゲームのキャラ物までシュエに掌握されてしまうのは、私としては気分が悪い。

(大人気ないのは百も承知で。)

前記事「iLa iLa iLa」の後日談となるが、アーロンが新品のモンハンTシャツを着て、シュエ家族の元から帰って来た後、実は私とアーロン、そして時にはビクトルも含めて、私たちは何度か衝突した。

お望みの物は、日本生まれの物だろうがスペイン生まれの物だろうが、何でも買ってきてくれる母親がいるというのに、それでもアーロンは時々、「梅子、〇〇ってアニメ(もしくはゲーム)、知ってる?日本で人気のヤツ。今度梅子が日本に行ったらさ、それの〇〇買ってきてよ。」と、懲りずに言うのだ。

だから「こっちの頼み事は何にもしてくれないくせに、自分の頼み事ばっかり言いやがって!コンニャロウ!」と、私もついついカッとなって、「アンタのママに頼みなさいよ!中国にはなーーーーーんでもあるんだから!」と言ってしまうのだった。

アーロンは、私が何に怒っているかわからないので、「なんで怒るの?なんでママが出てくるの?」と聞くのだが、その純真…というか、無知っぷりがまた逆撫でとなり、私はそのままブスーっと膨れる。

そこにビクトルが登場して、アーロンを別の部屋に連れて行き、「梅子はなぁ、この前お前が着てたモンハンのTシャツがショックなんだよ。お前、最初に梅子に頼んでたのに、梅子が買って来る前にママに買って来てもらっちゃっただろう?」と、静かにアーロンに諭すのが、いつものオチだった。

私もいつまでも大人気なくて、アーロンには申し訳ないのだが、これを機に「女っていうのは難しい生き物だ。女のヤキモチは質が悪い。」とでも、学んでくれれば幸いだ。

 

そんな衝突を何度か経ての、昨年の年末。

我が家でも、子供たちがクリスマスに何が欲しいか話し出すようになった。

アーロンは、私にクリスマスプレゼントをリクエストした。

NARUTOのサントラCDなんだけど、吉田兄弟っていう人たちの三味線で演奏してるヤツが欲しいんだ。」と。

コイツ、アニメだけじゃなく、吉田兄弟まで知ってんのか?!と驚いてしまった。

アニソンだけど、それでも日本の伝統楽器の音色にまで興味を持ってくれたことが、素直に嬉しかった。

Amazonで調べたら、日本からスペインにも送ってもらえそうだし、意外にも送料も安い。

アーロンには「1学期の成績次第だね~。」なんて嫌みを言いながらも、裏ではビクトルに相談して、早速注文することにした。

 

子供たちの冬休みは、ビクトルとシュエの養育権の契約により、開始日から大晦日までが、母親と過ごす日、元日から冬休み終了日までが、父親と過ごす日になっている。

スペインは、12月24、25日は、家族とクリスマスを祝う、1年で大事な日なのだが、それと同様に、1月6日も聖…なんとか…の日と言って、クリスマスの終了日。

これまた家族と過ごす大事な日で、祝日だ。

最近は、アメリカだかどこかの国の文化が入って来てしまって、最近のスペインの子供たちは12月25日のクリスマスと、1月6日(レジェス・マゴスと言う)の2回、プレゼントを手に入れることができるのだが、本来のスペインのクリスマス文化では、子供たちがプレゼントをゲットできるのは1月6日のみなのだそうだ。

我が家では、12月25日は子供たちと共に過ごせないので、子供たちにプレゼントをあげるのは、1月6日の1回のみだ。

以前は、「クリスマスに子供たちに会えなくても…」と、プレゼントを2つずつ用意していたが、「母親の家でも2回もらって、父親の家でも2回もらって、合計4回もなんて甘やかし過ぎる!普通の家では2回しかもらえないのだから、シュエは知らんけど、我が家では一緒に過ごせる1月6日のみ!」というルールに変わった。

 

かくして1月6日。

私とビクトルは、子供たちと共にレジェス・マゴスをお祝いした。

私からアーロンへのプレゼントは、残念ながらこの日に間に合わず、翌週にお預けとなった。

 

子供たちの学校は、6日の祝日の後、土日を挟んで翌週月曜日から始まるので、本来ならば、日曜の1月8日までが冬休みだったのだが、ビクトルがそれとはなしにシュエに「7、8の土日、どうする?君が子供たちと過ごす?」とメールで聞いたら、「そうしたい。」と言うので、冬休み最後の2日間、子供たちはまたシュエ家族の元へ引き取られて行った。

 

そして8日、日曜日の夜、子供たちが再び我が家へ帰って来たのだが、アーロンは翌日から学校へ着て行くコートを、シュエの家に忘れて来た。

忘れて来たというか、厳密に言えば、持って帰って来なかったのだ。

忘れて来たのは1月1日、シュエの家から我が家に帰って来た時だった。

だから、私とビクトルは「日曜の夜、必ず持って帰って来なさい!」とアーロンに何度も言い、アーロンも忘れていなかった。

だが問題は、アーロンではなく、シュエとその夫マックスだった。

7日、シュエとマックスが子供たちを迎えに我が家へやって来ると、彼らはそのままマックスの実家のある村へ直行した。

アーロンが「お正月の時、ママの家に学校のコートを忘れてきちゃったから、ママの家に一旦戻ってほしい。」と再三頼んだらしいのだが、シュエに「面倒くさい。」と一蹴されたそうだ。

そしてそのまま、日曜の夜までマックスの実家で過ごし、我が家へ帰って来た。

 

アーロンは、コート代わりに、新品の厚手のパーカーを着て帰って来た。

「ママに“コレ着て行きなさい!”って、無理矢理着させられたんだ!」と言う、その新品のパーカーは、胸にロゴ、バックにはキャラクターがこれでもかとでかでかとプリントされていた。

キャラクターは、まさかのNARUTOだった。

タグにはもちろん、“Made in China”の文字。

 

ビクトルが、「だから、梅子はもう、“子供たちのためにー!”なんて、努力しなくたっていいんだよ。するだけバカらしいだろう?」と言って、私の肩をポンポンと叩いた。

 

後日、私が日本のAmazonで注文していたNARUTOのCDが届いた。

なんか、一気に白けてしまって、私バカみたいだなーとか思ったけど、せっかく日本から届いたCD、へし折っちゃおうかなーとか思ったけど、クリスマス柄のカワイイ袋に入れて、その日の夜、アーロンにあげた。

アーロンは、それはそれは喜んで、思春期だからか、最近は私にハグするのは嫌がってたくせに、この時ばかりは「梅子、ハグしていい?」と言うや否や、「ありがとう!」と飛びついてきて、頬にキスをしてくれた。

 

子供たちが喜んでくれるなら、どんな努力も惜しみたくはない。

だけど、今回も前回も、これがシュエの画策だとしたら、末恐ろしいけれど、偶然ならば偶然でも、こういうパターンを繰り返すのは、正直しんどい。

 

 

■本記事のタイトルは、映画「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(2014年公開、アメリカ)をモジって使わせていただきました。
記事の内容と映画は、一切関係ありません。