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梅子のスペイン暇つぶし劇場

毒を吐きますので、ご気分の優れない方はご来場をご遠慮ください。

スペイン カフェ・ストーリー

クサクサした内容の記事ばかり書いていたので、箸休めがてらに今日はカフェのお話。

 

あ、そういえば、以前書いていた「「ある海辺の詩人」という映画」の話が、まだ途中でした…。

後日書きましょう。(忍法・後回しの術。)

 

このブログでもちょくちょく話すが、私と夫ビクトルは、それはもうしょっちゅう近所のカフェやバル(通称:おやじバル)に通う。

今日も行った。

最近は、気さくなスペイン人夫婦が営むカフェにばかり通っているが、そこが混んでいる時とか、「今日は別の所に行ってみようか。」なんて時は、別のカフェやバルに行く。

 

これは、スペインに限らずヨーロッパの他の国や、いやいや、ヨーロッパに限らず“日本以外の”別の国でもよくある風景なのかもしれないが、スペインのカフェやバルに行って私がいちばん驚いたのは、店員以外の、道行く一般人が、とにかく声を掛けてくることだ。

 

まず、街の中心地などの、観光客や買い物客が集うようなカフェやレストランのテラス席では、必ずと言っていいほど、物乞いが来る。

 

いかにもみすぼらしい恰好で、「パンを買うお金もないんです。1ユーロでいいんです。恵んでくれませんか。」と来る人。

“いかにもみすぼらしい”と、蔑むように表現したが、スペイン(もしかしたら他の国もそうかもしれない)に来た時は、ぜひ注意してほしい。

汚い恰好や、時には足が片方なくて靴も靴下も履かずに野ざらしで道端に佇み、物乞いをしている人は、中には本当に貧窮している人もいるのかもしれないんだけれども、実は大してそんなに貧しいわけでもない人もいる。

以前、「子供たちに食べ物すら買ってあげられない。」と物乞いをされて小銭をあげたのだが、その後、その物乞い(だと思っていた人)が、近くの別のバルでビールを煽り、タバコをふかしているところに出くわし、「やべっ。見つかった。」というような顔をされたことがある。

 

それから、物乞いの中には、バックにマフィアが付いていることもある。

カフェやレストランの激戦区から1本、2本外れた路地まで、黒ずくめの男たちが、黒ずくめの車でこういった人達を連れてきて、「よし、行って来い!」と送り出しているところを、以前、ビクトルが目撃したことがある。

マフィアの下でないと、お金を稼ぐことができないのかと思うと可哀想な気もするけど、でもやっぱり、私たちが恵んだそのお金が、マフィアに渡ってしまうと思うと、申し訳ないけどもうお金をあげたいと思えなくなってしまう。

 

それから、ストリートミュージシャン

突然現れて、いきなり演奏を始める。

楽器も様々だ。

アコースティックギターだったり、アコーディオンだったり、サックスだったり。

最近は、アンプ持参でエレキギターを大音量で掻き鳴らす猛者まで現れた。

夏になると、若者のミュージシャンが増える。

大学などの夏休みを利用しているのだろう。

路上で演奏して、小遣いを稼ぎながら、国内を旅しているのだ。

彼らは皆、カフェの客が聴いていようがいまいが、一通り演奏を終えると、1つ1つ席を回ってお金を要求する。

演奏が結構良かったりすると、私やビクトルもお金をあげることがある。

以前、ビクトルと私で、カフェでマックスからの電話を待っていた時があったが、実はその時も、ミュージシャンが現れた。

エレキギターの猛者なヤツだ。

彼はちょうど私たちの目の前で演奏しようとしていたので、私は咄嗟に英語で「今、大事な電話を待っているとこなんです。悪いけど、演奏は別の所でやってくれませんか?」と話しかけた。

すると、エレキな彼は英語がわかったのかわからないのか知らないが、「じゃあ、せめてお金をくれませんかね。」と言ってきたので、ビクトルが速攻で断り、追い払った。

 

売り子も来る。

宝くじ、いつまでも枯れないバラ、ライター、明らかに海賊版のCDや貴金属、ビックリするほどどデカいサングラス…等々。

宝くじと枯れないバラは、大概、おじいちゃんが売っている。

海賊版のCDや貴金属、どでかサングラスの類は、アフリカ系の黒人の若いお兄ちゃん。

今までの経験上では、ライター売りがいちばん質が悪かった。

彼はちょっと太めの白人だった。

初めて彼に会った時は、その押せ押せムードと話術が妙におもしろく、つい1つ買った。

後日、同じカフェでまたその彼が「ライター、どうですか?」とニコニコ顔で来たのだが、「この前、キミから買ったから今日はいらないよ。」と答えると、みるみる内に表情を変え、文句を言い、去って行った。

「あいつのライターはもう二度と買わない!」と、ビクトルが憤慨したのは、言うまでもない。

 

このように、中心地のカフェやレストランのテラス席は(外に限らず、中まで入って来ることもあるが)、はっきり言って、のんびりと個人の時間を満喫するのは難しい。

その点から言えば、中心地から離れた、我が家の近所のようなカフェやバルには、それほどそういった類の人は寄って来ないが、ところがどっこい、別の人種が寄って来る。

タバコ、もしくはライターの火を乞う人種だ。

 

すでになんとなーくお察しかとは思うが、ビクトルは喫煙者。

実は私も喫煙者だ。

だからいつも外のテラス席を陣取るわけなのだが、「ちょっと火貸してもらえますか?」とか、「タバコ1本…」とか、ちょくちょく声を掛けられる。

ライターを貸すぐらいはどうってことないが、タバコは、そう何人も来られてしまうのは困りものだ。

 

そこで学んだことが1つある。

それは、自身のタバコの箱は、絶対にテーブルの上に放置しないこと。

空き箱もダメだ。

放置したら最後、だ。

「タバコ、1本もらえませんか?」と、次から次へと人が来る。

老若男女やって来る。

 

誰かがタバコを吸っているのを見て、自分も吸いたくなることは、私もたまにある。

でも、だからと言って、その人に「ちょっと1本くださいな。」とまでは言えないし、そもそも「1本もらおう!」という気持ちになったことがない。

だから、こうして何のためらいもなく(…と私にはそう見える)「タバコ1本ください。」と寄って来る人の気が知れない。

 

ある日の午前中に、ビクトルと2人でカフェにいると、出勤途中らしき40代のおばさんが、「タバコを1本いただけないかしら?」と、声を掛けてきた。

身なりがとても素敵で、化粧もバッチリ。

とてもお金に困っている風ではないような人だった。

「貧乏じゃないんだから、タバコぐらい自分で買えよ!」と、おそらくビクトルは思ったのだろう、「これが最後の1本なんで…。」と、嘘を言って断った。

が、おばさんはへこたれなかった。

次に私に声を掛けた。

ビクトルは私に「やめとけ。」というような視線を向けていたのだけれど、咄嗟のことで戸惑ってしまい、「私のはメンソールですよ?」と思わず言ってしまった。

メンソールのタバコと知ると、「あぁ、それならいらない。」と、逆に断る人もたまにいるのだ。

おばさんは「かまわないわ。1本いただける?」と、ビクトルの顔を窺いながらも、私には満面の笑みで言った。

ここまで来ると、あげないわけにはいかないので、私はバッグからタバコを出して、1本差し出した。

「どうもありがとう!」と、おばさんは私のタバコを受け取ったのだが、その後、とんでもないことを言い出した。

「実は、これから同僚と落ち合うんだけど、同僚の分にもう1本いただけないかしら?」

 

はぁーー????

 

これにはさすがにビクトルがキレた。

「最初に“1本”って言ったんだから、1本で十分でしょう?それ以上欲しいなら、この先にタバコ屋があるから、自分で買ってくださいよ。」と言うと、おばさんは「仕事に行かなくちゃいけないから急いでるんです!ふん!なにさ!もう1本ぐらいいいじゃない!私の友達のためなのよ?友達が可哀想じゃない!」と逆ギレして、なおも私にせがもうとしたが、ビクトルが阻止。

おばさんはブーブー言いながら去って行った。

そのおばさんに会うのが嫌で、それ以来、私たちはそのカフェに行くのをやめた。

 

タバコではないのだが、ついこの間、ものすごいカップルに声をかけられたのを思い出した。

そのカップルは、ジプシーのような出で立ちで、日本で言うところのヤンキーみたいなカップルだった。

カフェに辿り着くだいぶ遠くから、言い争うような声で話していて、私たちも、他の客たちも、なんだ?なんだ?と、気付いてはいたが、知らないふりをしていた。

そういう輩には、関わらない方が身のためだということが、この国では実際によくある。

 

ところが運の悪いことに、このカップルはなぜか私とビクトルが座るテーブルにやって来た。

2人共、クロワッサンのような物を食べていて、口の周りにはカスがたくさん付いていて、モグモグしながら話しかけてきた。

どうやら、家族だか親戚だかに急いで連絡を取らなければならないのだけど、自分たちの携帯のSIMカードを更新したばかりだか何だかで、なぜか携帯が使えない。

しかも、両方共携帯のバッテリーも充電がない。

だから、携帯を貸してくれということだった。

彼女の方はもう泣きそうになっていて、彼氏の方は、とにかく興奮して「畜生!なんでこんな時に携帯が使えないんだ!」と、騒いでいた。

実は最初、彼らはビクトルの携帯を見て、自分たちのSIMカードを入れて使えるかどうか試させてくれと頼んできたのだが、それはさすがに断った。

だから、「僕の携帯で、電話したい人にかけるのはいいですよ。」と言って、電話をかけさせることにした。

彼女が私たちのテーブルに座り、「ありがとう。邪魔してごめんね。本当にごめんね。」と言いながら、ビクトルの携帯で電話をかけ始めた。

彼女の手の指は、さっきまで土いじりでもしてたのか?ってほどに、真っ黒だった。

何度か試させたのだが、結局電話先の相手(名前をたしかセバスチャンと言っていた)が出てくれず、彼女は半ベソ状態。

彼氏は「クソー!!!どうすりゃいいんだ!!」と叫びながら、どっかに行っちゃう始末。

彼女の方は、その後、カフェの女将さんに携帯を充電させてもらえないかと頼みに行ったが、断られ、「あれ?アイツどこ行った?」と、発狂して行方をくらましてしまった彼氏を探しに行ってしまった。

 

2人が去ってから、カフェの女将さんが「あの人たち、知り合い?」と聞いてきた。

まさか!

「いえ、知りません。」と、ビクトルが答えると、女将さんは「そうよねぇ。でもああいう人達には、悪いけど怖くて関わりたくないわ。だから充電させてくれって言われたけど断ったのよ。」と話した。

この国でカフェを経営するのって、相当ハードだなと、ふと改めて感心してしまった。

 

ヨーロッパの素敵な街並みの中で、青空の元、コーヒーをたしなむのは、一見オシャレで素敵~♪に見えるけれど、こういう危険…というか、戦い…というか、そういうことが隣り合わせなので、スペインでカフェやバル、レストランのテラス席を利用する際は、皆さんもどうぞご注意を。

 

 

■本記事のタイトルは、映画「台北カフェ・ストーリー」(2010年公開、台湾)をモジって使わせていただきました。
記事の内容と映画は、一切関係ありません。