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梅子のスペイン暇つぶし劇場

毒を吐きますので、ご気分の優れない方はご来場をご遠慮ください。

「ある海辺の詩人」という映画

【スペインってこんな国】

※今日のお話は、人種差別と取られかねない発言が出る可能性があります。

 読んで気分を害された場合、予めお詫びを申し上げます。

 

 

「ある海辺の詩人~小さなヴェニスで~」という、イタリアの映画をご存知だろうか。

 

ご存知なくてもご心配なく。

私も知らなかったから。

あ、そういう問題じゃないか。

 

あれはもう、いつだったか、2年ぐらい前になるのかな。

ある日、夫のビクトル(=映画ヲタ)が「興味深い映画があるよ。」と言って、2人でこの映画のDVDを観た。

 

舞台は、イタリアの海辺の小さな町だったか村だったかで、満潮だったか何だったかになると、海水が床下浸水して、それがまるで“水の都・ヴェニス”のようだから、「小さなヴェニス」と呼ばれる漁師町。

その町に、1軒のバーがあり、ある意味深な中国人女性を含む、数人の中国人が切り盛りしていた。

そして、その町に、1人の老いた漁師がいて、彼もまた東欧のどっかの国からの移民なのだが、長年ここで漁師として暮らしているもんだから、地元の人々から「お前はもうここの人間も同然だ。」と、少しずつ認められる存在になっていた。

ストーリーは、バーで働く中国人女性と、この老漁師の、淡い恋…のような話。

風景描写がとても素敵で、熟年者同士のしっとりとした、それでいてピュアな恋の行方…。

なかなか素敵な映画だ。

 

…と、

私がもしこの映画を、まだ日本に住んでいる頃に観ていたら、感想はここで終わっただろう。

しかし、私がこの映画を観たのは、スペインに住み始めてからなので、感想はこれだけでは終わらない。

ビクトルが言ったように、いろんな意味で「興味深い」映画だった。―――

 

 

在西日本人の方の、とあるトピックで読んだのだが、スペインは、EU圏で最もバー(スペイン語で言うところのバル)の件数が多いそうだ。

2013年時点での記録では、スペイン南部のアンダルシア地方のバルの件数だけでも、デンマークアイルランドフィンランドノルウェーの4カ国のそれの合計よりも多いらしい。

言われてみれば、我が家から徒歩5分、たった5分圏内でも、10件近くバルやカフェがある。

ママの家に行った帰り道、買い物の帰り道、何の用事がなくても、それはもう、ものすごく気軽に「ちょっとコーヒー飲んで行こうか。」となる。

お昼ご飯を作るのが面倒な時、「じゃあ、バルで済ませようか。」なんてこともしょっちゅうだ。

ちなみに今日のお昼ご飯は、バルでボカディージョ(バゲットのサンドイッチ。日本で言うところのおにぎりのような、スペインでは超典型的な軽食。)を食べてきた。

 

えーっと、ここであんまり誤解してほしくないのだけれど、我が家の近所にあるバルやカフェは、たいして小洒落てはいない。

街のセントロや旧市街、洒落た飲食店の激戦区域、お金持ちの人達が住むエリアなんかに行けば、スタバもあるし、それこそFacebookやらに写真を載せたくなるような小洒落たバルやカフェがたくさんあって、観光客や若者たちなんかが戯れているけれど、私たち夫婦が行く近所のバルは、それはそれは庶民的で、在西日本人の方々は、これらの庶民的なバルを“親父バル”とさえ呼び、私みたいに好き好んで通うような人は、そうそういないんじゃないだろうか。

 

だが、驚くべきは、バルの数だけではない。

我が家から徒歩5分圏内にあるそれらのバルの内、約半数は、中国人が経営しているということだ。

 

スペインには、同じスペイン語を使う南米からの移民だけでなく、東欧や南アフリカなどからも多くの移民を受け入れている。

アジアからの移民も多いが、アジアの場合、そのほとんどは中国人だと思う。

 

日本の外務省が発表している、2015年10月時点の、スペイン在留日本人の数は、8080人だそうだ。

その内の、永住者は2754人。

長期滞在者は、5326人。

スペインに住む日本人の数は、1万人にも満たない。

※“永住者”とは、「3か月以上の海外在留者のうち、在留国などにより永住権を認められており、生活の本拠を我が国から海外に移した邦人。」で、“長期滞在者”とは、「3か月以上の海外在留者のうち、海外での生活は一時的なものであり、いずれ我が国に戻るつもりの邦人。」をさす。

 

ところが中国人の場合、スペイン国勢局が2015年1月に発表した統計によると、合法的に政府に住民登録しているスペイン国内の中国人の数は、18万6031人だそうだ。

 

これだけ多くの中国人が住んでいるから…なのかどうかはわからないけれども、私たちが住むこの地方都市の街にも、もちろん、チャイナタウンがある。

チャイナタウンだけでなく、中国人が経営するお店はいたる所にある。

日本の100均ショップのようなお店、服屋、靴屋、キオスコと言う、日本のコンビニのようなお店…。

日本料理のレストランだって、中国人がやっている。

どこもかしこも中国人のお店だらけだ。

 

だから、この国の人は、私みたいな日本人を見ても、みーんな中国人だと思っている。

ちょうど昨日も、我が家の次男エクトルのお迎えに行こうと、私が1人で道を歩いていたら、歯医者の窓拭きをしていたスペイン人のおじちゃんに声をかけられた。

かけられたその言葉が、私の名前の発音に似ていた気がして、知り合いかと思って振り向いたら、全然知らないおじちゃんだった。

振り向いてしまった手前気まずくて、私は咄嗟に「こんにちはー。」と言ってしまったのだが、おじちゃんは私のその反応に気を良くしたのか、笑顔で「ニーハオ!」と言った。

おじちゃんは、私を中国人と間違えたのだ。

おそらく中国語の勉強でもしていて、話してみたかったのだろう。

「あー、えっとー、すみません。私、日本人です。」と、私が言うと、おじちゃんは「お!それは失礼しました。SAYONARA。」と照れながら言って、窓拭き作業に戻った。

おじちゃん、中国語のみならず日本語もイケるクチだったかと思いながら、私はその場を後にした。

 

私たちがよく、西欧人はすべてアメリカ人だと思ってしまうのと一緒で、こっちの人にしてみれば、特に日本、中国、韓国の人の違いはパッと見ではわからない。

(私もたまにわからない。)

 

さて、話を戻して、我が家の近所のバルの話をしよう。

 

…と思ったら、だいぶ長く余計なことを話し過ぎた。

(これでもだいぶ端折ったつもりだったのに…。)

 

というわけで、話ぶった斬ってナンですが、続きはまた今度ということに。

 

 

■本シリーズのタイトルは、映画「ある海辺の詩人~小さなヴェニスで~」(2011年公開、イタリア)をモジって使わせていただきました。
記事の内容と映画は、一切関係ありません。