梅子のスペイン暇つぶし劇場

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裁きは終りぬ ~弁護士と再会編~

前回の記事を書いてから、だいぶ時間がたってしまったが、現在進行形の話題なので、シリーズとしてこれからも取り上げて行こうと思う。

 

前回のお話は、コチラ

 

先週の金曜日、夫ビクトルが、弁護士に会ってきた。

1年ぶりの再会だ。

 

この弁護士には、ビクトルが前妻シュエと離婚する時からの付き合いで、昨年の、子供たちの養育方法の契約書変更の際の裁判でも、ずいぶんお世話になった。

(※離婚後の、子供の養育方法の契約書については、過去記事「スペイン式離婚狂想曲」をご参照ください。)

 

女性の弁護士で、シュエの性格を熟知してくれているのはもちろんのこと、対女性と争うビクトルにとっては、女性の立場や目線からのアドバイスを聞けるのも、戦略を練るのにとても助かっている。

約1年ぶりにアポイントを取ったのだが、その際、ビクトルが「ご無沙汰しています。ビクトルです。覚えていらっしゃいますか?」と聞くと、弁護士は「もちろん!あなたと前妻さんの案件、特に前妻さんのことは、生涯忘れられない案件の1つですから。」と冗談を言って笑ったという。

 

なぜ、今回ビクトルが弁護士に会ってきたのかについては、上記のとおり、同タイトルの過去記事を一読いただきたいのと同時に、同じく過去記事、「路肩の中心で、馬鹿とさけぶ」シリーズも参照いただければと思う。

 

 

弁護士事務所を訪ねる前に、ビクトルは、これまた弁護士をしている親友に(…と言っても、こちらは刑事事件専門の弁護士なのだが)、予め相談をしていた。

親友曰く、先々週の日曜日の、我が家のエントランスと路上での“シュエ・シャウト事件”については、「腹立たしい気持ちはわかるが、その程度では単なる痴話喧嘩でしかないから、裁判所は相手にしないだろう。」ということだったので、今回は、「前妻シュエの海外出張の頻度が、度を超えている」件1本に絞ることにした。

 

資料として弁護士に提出するため、ビクトルは早速、ここ1年間にシュエが海外出張した日程と、出張日数をまとめ始めた。

シュエが国外にいたトータルの日数は、約120日間に及んだ。

1年の約1/3、約4か月間にものぼる。

それから、質問したいことのリストも作った。

「弁護士へのいい手土産になった。」と言っていた、シュエのシャウトを生々しく録音したボイスレコーダーは、持って行かないことにした。

 

当日、私は、ビクトルにお供しなかった。

ビクトルが弁護士を訪ねている間、スーパーへ行き、その後、義母の家に行き、スーパーで買ってきた食料品を冷蔵庫に詰め、ゴミを出し、義母の身の回りの世話をちょこっとして、義母とちょっとお喋りをして帰宅した。

帰宅すると、ビクトルももう帰宅していて、日本茶をいれていた。

我が家では、私よりもビクトルの方が、マメにお茶をいれる。

 

2人でお茶を飲んで、まずは私がビクトルに義母の様子を報告した。

本当は、私も早く弁護士に何と言われたかを聞きたかったし、ビクトルも早く話したそうだったのだけど、その時はなぜか2人とも、家の中でこの話題を話したくなくて、おかしな話なんだけども、お茶を飲み干すなり、「よし!バルに行こう!」と言って、今度は2人でコーヒーを飲みに出かけた。

 

中国人が経営する、近所のバルへ行き、カフェオレを注文すると、「で?どうだった?」と早速私がビクトルに聞いた。

「弁護士に提案された方法は、3つある。」と、ビクトルが言った。

 

方法①: 昨年の2月に変更したばかりの、子供たちの養育についての契約書の内容を、条件を新たに加えるなどの一部修正をするか、もしくは、変更前の初代の契約に戻すかを、再び裁判を起こして、裁判所に依頼する。

 

方法②: シュエが海外出張を増やしたことで、子供たちの心境に影響が出ていることを、裁判所か、もしくはシュエにクレームする。

 

方法③: 「契約書をリスペクトしないと、裁判しますよ?」と、シュエに直接、法的に警告する。

 

「僕は、3つ目の方法が、今はベストな方法だと思う。」と、ビクトルが最後に言った。

 

方法①について。

今の契約書では「母親が、時々国外へ出なければならない際は、父親が親権を持つ。」とある。

しかし、“時々”とは、1年で何回・何日間・何日おきまでが“時々”なのか、詳しく言及していないので、もし裁判をするのならば、この辺をきっちりと明記し直したいところだ。

また、親権日にシュエが国外にいて、子供たちと一緒にいられなかった日数を、例えば「夏休みや冬休みなどで清算しなければならない」なーんて一文を加えることができたら、御の字だ。

 

しかし、この方法には、2つの大きなリスクがある。

1つ目は、契約書を変更してまだ1年しかたっていないので、裁判所が嫌がる可能性があるということ。

通常、離婚後の子供の養育方法の契約は、そうちょくちょく変更するものではないらしい。

そうでなくとも、ビクトルとシュエは昨年契約を変更し、その時の泥仕合を裁判所は覚えているので、また裁判となると、印象はあまり良くない。

 

2つ目は、もしビクトルが契約内容を変更したいと言えば、おそらく裁判所は、「まずは自分たちで交渉しなさい。」と言う可能性が高い。

交渉となると、間違いなくシュエも何かしらの要求をしてくる。

あの人は、黙ってビクトルの要求を呑むような人じゃない。

契約内容を、初代の内容に戻すなんて、もってのほかだ。

初代の契約書は、2人が離婚する時に作られたもので、当時シュエは、今のようにちょくちょく長期の海外出張があったので、学校の長期休暇はシュエが、それ以外はビクトルが親権を持つことになっていた。

また、当時シュエは、夏休みは毎年、子供たちを中国の実家に連れて行くことにしていたので、シングルマザーが子供2人分の飛行機代を用意するのは大変だろうとビクトルが案じて、契約書に「父親が飛行機代の半分を支払う。」という1文を盛り込んだ。

現在の契約書にはこの1文はないが、この文章を削除するのに昨年どれだけ苦労したか、本ブログを読んでくださっている皆様にも、きっと想像に難くないだろう。

というわけで、方法①は、速攻で却下だ。

 

次に方法②だが、シュエが子供たちと毎週末過ごすようになったからそうなったのか、それとも、再びシュエが子供たちを放って海外出張を増やしたからそうなったのか、正直なところ、今となってはどちらが原因なのかわからなくなってきているのだが、とにかく、昨年から子供たちに心境の変化が現れ始めた。

 

長男アーロンは、私たちに母親の不満をこぼすようになった。

今では、それはもうハッキリと、「僕はママを信用していない。」とまで言う。

次男エクトルは、そもそもの性格が少し暴力的なのだけども、昨年からさらに輪をかけて、暴力的な言動が増えてきた。

これについては、ブログのネタとして、1つの記事になりそうなので、詳しくはまた改めて別の記事で取り上げたいと思う。

また、普段、子供たちは私のことを「梅子」とか「梅」と、名前で呼ぶのだが、今年に入ってから、エクトルは私を「マミー」と頻繁に呼び間違えるようになった。

初めの頃は、「間違えた…」と恥ずかしそうに訂正していたけれど、最近は、間違えても平気な顔で、ふざけてわざと「マミー!」と呼び続けたりする。

 

子供たちのこうした心境の変化を、「子供たちが母親を必要としている証拠」という理由にすれば、裁判するにしろ、シュエに直接クレームするにしろ、有効に働くだろうと考えていたのだが、弁護士の見解は、「特に裁判で、この事象を“証拠”として取り上げる場合は、専門医師の診断が必要。」とのことだった。

また、子供の心理的な問題を扱うのは、主に、相手から親権を奪う目的の時が多いようで、その後弁護士は脱線して、親権はく奪の件について説明し始めたそうなのだが、今回の我々のメインの目的は、親権はく奪ではなく、どうしたらシュエが海外出張を自制して、契約書に沿って親権日をきちんと責任を持って子供たちといてくれるかなので、この方法はとりあえず却下とした。

「それに、子供たちにカウンセリングを受けさせるのは、ちょっと気が引ける…。」と、ビクトルは言った。

 

方法③は、具体的に言えば、bro-faxという、日本で言うところの、内容証明が、威力がもう少しパワーアップしたような法的文書を、ビクトルの弁護士の名でシュエに送付することになる。

弁護士の名前を借りて「ルール守んないで調子こいてると、裁判しちゃうぞ。」と言えば、シュエは恐れをなすだろう。

普段は、ビクトルの言うことなんかバカにして聞かないが、弁護士から言われたら、おとなしく聞いてくれるだろう。

 

しかし、bro-faxによってシュエがもしちゃんと我々の要求を聞いてくれたとしても、そう長くは続かないと、私もビクトルもすでに予想はしている。

せいぜい初めの何か月か、もって1年か、そんなもんだろう。

ただ、次にその時が来たら、裁判を起こすかどうするか、今度こそ真剣に考えればいい。

もし、裁判を起こすことになったら、ビクトルには“過去にbro-faxを送って警告した”という既成事実があるし、それによって裁判所が、「この男は、裁判を起こす前に自分自身で問題を解決する努力をしていたんだな。」と、ビクトルに対して良いイメージを持ってくれた日には、かなり有利に事が運ぶかもしれない。

やらないよりはやった方がいい。

 

というわけで、とりあえず、ビクトルと私は、「方法③でいこう!」という結論に達した。

 

そうは言っても、方法①や、方法②、そして方法③についても、新たな疑問も浮かんだ。

例えば、方法①の裁判を起こすことについては、何も契約書を変更する話じゃなくても、例えば、「昨年裁判所から発行された契約書(※双方で話し合って作成した契約書でも、サインの際は一旦裁判所を通すので、裁判所発行と表記する。)の内容を守らないので、シュエにペナルティを課してほしい。」という話題で、裁判を起こすことは可能かどうか。

例えば、方法③で、bro-faxを送ることにした場合、文書に方法②で取り上げた、子供たちの問題をサラッとでも触れることは可能かどうか。

また、bro-faxは、シュエ個人だけでなく、シュエの職場宛てに“クレーム”として送ることは可能かどうか、といった具合だ。

 

弁護士との面談は、まだ1回目。

これからビクトルは、弁護士ともっともっと話を詰めていくことになる。

 

続編はコチラ。

>>裁きは終りぬ ~決戦編~ 1

 

 

■本記事シリーズのタイトルは、映画「裁きは終りぬ」(1950年公開、フランス)をモジることなくそのまんま使わせていただきました。
本シリーズの内容と映画は、一切関係ありません。